あゆみ野クリニックの心療内科

2025/06/04

あゆみ野クリニックは心療内科、精神科を標榜してはいますが、実は私はそのどちらも系統的な修練を受けたわけではありません。実は私は自分があゆみ野クリニックを引き継いだとき「心療内科」ははずそうと思ったのですが、患者がいるからと言われ仕方なく続けることにしました。ところが心療内科で請求できるのは「心身医学指導料再診800円」だけで、これではクリニック倒産しますから、経営のために精神科も標榜したのです。実はその程度です。


しかし実際にやっている内に、だんだん当院の心療内科というものが出来てきました。主に労働問題、つまりパワハラや職場の人間関係のもつれとか、イジメ、DVなどを扱うのです。


心療内科と精神科ってなにが違うの、というのは曖昧な問題です。いまは「メンタルクリニック」という便利な言葉があるので、精神科にも心療内科にも似たような患者が来ることは多い。しかし心療内科と精神科で本質的に違う点は何かと訊かれたら、私ならこう答えます。


心療内科は人生を扱う。精神科は根本的には脳を扱う。


脳を扱うのは神経内科という事になっていますが、しかし精神科しか扱えない患者は、たしかに精神や感情に於ける問題を抱えていますが、その根本要因は未だ不明だが脳になんらかの病変が起きているはずだ、と言うものです。統合失調症とか、昔で言う大うつ病、今の言い方なら「再発性うつ病エピソード」、「原因が特定されない幻覚妄想」などです。こういう症状を持つ患者さんも、無論生活のストレスで病状は悪化しますが、しかしその人の病気の根本原因は「何かまだ完全には突き止められてはいないが脳の内因性変化」なのです。内因性、つまり外からの刺激ではなく、そもそもその人の脳の中で何か問題が起きているのです。


一方、心療内科が本来扱う患者の病因は「人生」です。つまり心療内科にも精神科にも「鬱状態」の患者は来るが、その鬱状態の根本原因はどうもその人が抱えている人生のストレスではないな、となればそれは精神科ですが、その鬱状態を引き起こした根本原因がその人の人生、生活要因だとなればこれは心療内科なのです。


時々「お前は心療内科の系統的研修を全く受けていないのに何故心療内科を標榜しているのだ」と批判されることがあります。それはごもっともなのですが、心療内科というのがそもそも「人生を扱う診療科」であるなら、心療内科医にもっとも要求される資質は「その医者がどれだけ必死に人生を生き、人生の苦労を舐め、自分の体験をどれだけある基準を当てはめて標準化できているか」だと思います。その基準は、無論心療内科医が学ぶ心身医学でも良いのですが、私のように労働三法と仏教であってもよいのです。要するに人生の塵労を何かの基準に当てはめ、ある程度標準化する、一般化することが出来ればいいのです。


石巻にも、本来精神科医であるメンタルクリニックはもともと何件かあるし、お隣の東松島市を含めれば精神科単科の病院は二カ所あります。だから、私はあゆみ野クリニックが扱う心療内科の患者は、そういう精神科が本来扱わない心の病に限ろうと思います。具体的には、労働問題とDV、いじめです。しばらくの間、当院の人事体制が混乱していたので私もちょっと心療内科初診を毎週3人設けるというのは無理だったのです。私の精神が疲労困憊してしまいました。だから「初診は2万」というバリアを設けていました。しかし7月から、この「2万」というバリアは止めます。その代わり、当院が扱う患者は労働問題とDV、イジメに限定します。つまり、その人が心を病んだ原因が明らかにその人の人生、その人が置かれている社会環境(職場や学校、家庭環境など)にあると考えられる人だけを扱います。そうでない人は、精神科医のメンタルクリニックをご紹介します。


要するに当院の心療内科は、人生相談に徹するのです。

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