漢方の副作用にはどんなものがありますか

2023/05/25

今日、あるオンライン診療を受けている方から、「先日の処方を飲んだら空咳がしていくらか息苦しさも感じた」と連絡がありました。ただちに服用を中止し、呼吸器内科でCTを撮って貰うよう話しました。その患者さんの処方には黄芩(おうごん、こばねばな)が入っており、黄芩は時に間質性肺炎を起こすからです。(後日その方から連絡があり、肺のCTでは異常がなかったということで私も一安心しました。

 


漢方は天然物だから副作用はないとか少ないとか言うのは全くの嘘です。私が日本老年医学会のガイドラインで漢方について纏めた時、「漢方の有害事象」として一覧表を載せました。内容は下記の通りです。

 


1) 附子含有製剤(八味地黄丸、桂枝加朮附湯など多数)
附子はトリカブトの根であり、毒性成分aconitineを僅かながら残す。それで、軽いものは口周辺の痺れ、酷い場合は不整脈や血圧低下、呼吸障害を起こすとされる。コントロール不良の高血圧患者や頻脈性不整脈を持つ患者では特に注意が必要だ。

 


2) 甘草含有製剤(漢方エキス製剤の7割)
甘草は長期服用、あるいは過量服用で低カリウム血症を起こし、それにともなう高血圧、浮腫、不整脈などを起こす。ループ利尿薬と併用するのは基本的に避けるべきである。利尿薬との併用で心不全が増悪し、死に到った症例もある。

 


3) 麻黄含有製剤(麻黄湯、葛根湯、麻杏甘石湯、五虎湯その他多数)
麻黄はエフェドリン、シュードエフェドリンを含むので、過剰摂取すれば高血圧、幻覚、排尿障害などを起こす。コントロール不良な高血圧患者、虚血性心疾患を持つ患者、元々排尿障害がある患者では特に気をつける。

 


4) 大黄、芒硝含有製剤
当たり前だが、これらは強い下剤であり、過剰に摂取すれば下痢による脱水などを起こす可能性がある。もう一つ、既に触れたが大黄の瀉下成分はセンノサイドなので、長期に使用すると耐性を起こす。

 


5) 黄芩含有製剤(小柴胡湯他多数)
黄芩は単独でも間質性肺炎を起こす場合があるが、インターフェロンと併用することによりそのリスクが高まるため、併用は禁忌である。ただし元々間質性肺炎を有する患者に黄芩含有製剤を使って悪化するかどうかは定説がない。

 


6) 山梔子含有製剤(加味逍遙散など複数)
山梔子は長期(数年から十数年)にわたり使用すると、稀であるが静脈硬化性大腸炎を起こすことがある。長期連用は避けること。

 


私はこの表を纏めた当事者ですから、これらの副作用についてはよく知っています。しかしだからと言ってここに載せた生薬を使わないというわけにはいきません。それぞれの生薬には必要な薬効があって、副作用が起きうることを知りつつ使うべき時は使います。ですから、私の処方を飲んでいて「変だな」と思った時はすぐ私にご連絡ください。それが副作用なのかそうでないのかは、私が判断出来ます。全て薬というのは効果と副作用があります。大切なことは、その薬を処方する医師や調剤する薬剤師がそういうことを知っているということです。知っていれば、患者さんの問い合わせにも即座に対応できますから、その薬を出しても心配はないのです。ところがこういうことを知らないで平気で漢方薬を処方したり調剤する医師や薬剤師が、残念ながら非常にたくさんいます。漢方を勉強していないのに漢方薬を出す医師とか薬剤師というのは、極めて危険なのです。


ちなみに漢方薬にはもう一つ、「誤治」があります。例えば小建中湯を使うべき人に大建中湯を出したとか、桂枝湯を使うべき人に麻黄湯を出したとか。残念ながらメーカーの勉強会レベルで漢方を使っている医者の処方には、しばしばそういう誤治が診られます。これは副作用じゃありません。本来不適切な治療をしているから悪い作用が出ているのです。自分が飲まされている漢方は誤治じゃないかと疑う人は、当院のオンライン診療でセカンドオピニオンをお勧めします。セカンドオピニオンは保険がきかないのですが、当院では一回1万円でお受けします。まあ、普通に当院のオンライン診療を受けて戴いた方がお得ですけど。


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