いわゆる「マイナ保険証」についての当院の考え。

2023/07/03

マイナンバーカードに保険証の機能を組み合わせるという国の政策が表明されています。2年後に現在の保険証を廃止し、全面的にマイナンバーカード保険証に移行させると言います。しかし当院及び院長である私は、この件に極めて憂慮を持ち、非常に懐疑的です。

2021年時点で国がマイナンバー事業に投じた総額は8800億円だったそうですが、マイナポイントとか言うものにさらに1兆8千億円を投じるそうです。総額3兆円近い事業に膨れ上がったわけです。ところがつい先日もマイナンバーカードを使った証明書交付サービスで、住民票の写しを誤交付するトラブルが生じるなど、トラブルが相次いでいます。公金受取口座で本人ではない家族名義の口座を登録してしまったエラーが約13万件も確認されるなど、トラブルは枚挙にいとまがありません。


そりゃ巨大なシステムを作る時、初期故障はある程度避けられないでしょう。しかしそれだからこそ、本格運用に踏み切る前になんども色々な場面で予行を重ねるべきでした。線路敷いて車体作っていきなり翌日から走る電車は無いわけです。必ず実際の線路で何度も何度も走らせてみて、初期故障を確認して修正し、これなら客を乗せても大丈夫となって初めて開業するわけです。しかしこの制度について国は予行演習も何もなく、「とにかく実際に走らせてしまおう」という態度です。いやそれはないでしょうと思います。


マイナンバーカードの一番の本質は本人確認のための身分証明書の筈です。それなら、当然各人のもっとも基本的な個人情報がそこに入ります。そう言うものが「他人と間違えた」とか、酷いのになると浜松市で起きた事例で「自治体がマイナンバーカードに誤って他人の顔写真を貼り付けた」など、ちょっとトラブルの次元の低さに唖然とします。3兆円使って何やってんだか。日本医師会も「反対はしていないが、マイナンバーカードの普及率を考えると、2年後に廃止することには懸念がある」とHPで公式に意見を表明しています。しかし私は普及率以前の問題として、患者本人の健康情報に紐付けられている「健康保険証」をこの惨憺たる状況のシステムに乗せるというのは、はっきりと反対します。今の混乱状況が2年後に信頼できる制度になっているかどうか、極めて疑わしいです。当院はマイナンバーカードシステムに関わる現状が全面的に改善され国民の信頼を得るに至るまで、この制度に保険証を紐づけることには反対を表明します。


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