悩ましいコレステロール

2023/09/04

患者さんが健診で「コレステロールが高いと言われました」というの、いつも悩んでしまいます。

 

脂質異常症、特にLDLコレステロールが高い日本人のコレステロールを治療すべきかどうかで一番問題になるのは、その治療ガイドラインを出している日本動脈硬化学会と、コレステロールの治療薬を出している製薬会社の癒着が強すぎるという事です。あの学会のえらい人たち(たいしてえらくないしょぼい大学の教授クラスも含めて)はほとんど全員コレステロールの薬を作っている会社から毎年相当額の金を貰っています。講演料だなんだですが。それが日本の動脈硬化学会だけなら良いが、事情は欧米もほぼ同じらしいのです。

そうなると、学会が出すガイドラインに従って治療して良いのかという話になってしまいます。お金が絡んでいるとなると、どうも信用できないわけです。それではガイドラインではなく、原著論文を読んでみましょう、と言うわけで「日本人で、 LDLコレステロールが高いと言う他に異常がない集団」を対象にしてLDLコレステロールを下げるメリットがあるかどうか調べた治験を探してみると、少なくとも最近20年では見つかりません。ちゃんとした臨床研究の論文がないのです。欧米人を対象にした研究は行われていますが、欧米人と日本人では血管の性質が違ったり、そもそも心筋梗塞の発症率がまるで違うので、欧米人のデータを日本人には持ってこれません。


心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある人を対象に再発が減るか、という臨床研究はあります。それによると再発は減ったそうです。だからそう言う人ならLDLコレステロールは下げます。しかしただLDLコレステロールが高いと言うだけの日本人を対象にして、LDLコレステロールを下げるとどういう臨床的メリットがあったかという治験は、色々キーワードを変えて探しても、少なくとも最近20年以内での英論文としては見つからないのです。だからコレステロールを下げた方がいいのかどうか、臨床研究を探しても答えが出ません。


じゃあ動脈硬化の仕組み」から言うとどうか。動脈硬化というのは、まずなんらかの理由で血管の壁に炎症が起きて始まります。するとLDLコレステロールが炎症で損傷した血管内皮の傷に入り込みます。つまりLDLコレステロールは炎症を起こした血管内皮に当てるパッチ、絆創膏みたいなものです。入り込んだLDLコレステロールが酸化する、つまり絆創膏が古くなると、それを免疫細胞が分解しに来るのですが、それが追いつかないとプラークと言う塊が出来ます。こういうのが多くなると動脈硬化になるというわけです。


しかしこの話の中では、LDLコレステロールが根本原因ではありません。そもそもは血管内皮に炎症が出来ることが発端です。LDLコレステロールは炎症で傷ついた血管内皮に当てる絆創膏のようなものです。それが酸化するというのは、絆創膏が古くなって汚れるようなイメージです。だから本当を言えば血管内皮の炎症を抑えるのが根本治療であり、次は絆創膏が古くなること、つまりLDLコレステロールの酸化を抑えるのが治療の筈で、LDLコレステロールの血中濃度を下げるという論法はどこかおかしいのです。だってそれは炎症を起こして傷ついた血管内皮細胞に当てるパッチ、絆創膏なんだもの。


結局、心筋梗塞などをやったことがない、ただ「コレステロールが高い」というだけの日本人に対して本当にコレステロールを下げた方がいいのかどうか、謎なんです。だから当面、あゆみ野クリニックでは「新しくコレステロールの薬を始める」ということは、やめました。心筋梗塞などの既往がある人だけはやりますが、それ以外の人に新しくコレステロールの薬は出しません。今まで飲んでいるという人にはこういう事情ですと説明し、ご本人が続けるというなら続けます。ただしコレステロールの薬はちょいちょい筋肉が壊れるという副作用が起きます。そうなったらそれ以上はコレステロールの治療は続けません。だってそもそもやった方がいいのかどうか曖昧な治療をして副作用が出るなんて、患者さんにとって「やるだけ損」ですから。


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