食養生は難しい

2023/09/15

食養生。この食べ物はあれに良いとか、悪いとか言うのは、真面目に研究すると、ほとんど証明出来ないです。と言うのは、ある一種類だけを毎日ひたすら食べる人って、まずいないからです。


例えば納豆とかってなんとなく健康に良さそうじゃないですか。だけど「納豆を日頃食べる人とほとんど食べない人で心筋梗塞の発生率は違うか」という研究をしようとしても、納豆を常食する人はご飯も味噌汁も常食しています。そうすると「納豆を常食する人としない人」に分けて研究しようとしても、それは納豆の効果なんですか、ご飯の効果なんですか、味噌汁の効果なんですかって、分からないのです。


だから食事が健康に与える影響は「食事パターン」で覧るしかありません。昔東北大にいた頃、高齢者の食事パターンと転倒骨折の関係を見たことがあります。地域コホートと言って、ある地域(私が使ったのは仙台市鶴ヶ谷地区)の人々の生活習慣を細かく何年も調べ続けるんです。それが東北大にデータとして蓄積されていて、そのデータを使って「食習慣と高齢者の転倒骨折はどの様に関係するのか」調べました。


そうしたら我々の解析では「野菜や果物に偏りがちな高齢者は転倒骨折をしやすく、肉や魚など動物性タンパクをしっかり取る傾向がある人は転倒骨折しにくい」という結果が出ました。


それを世界的に有名なNutrition(ニュートリション)と言う栄養学のジャーナルに投稿したら、「これまでの欧米の研究は、全て野菜や果物を摂ると転倒骨折しにくい」となっている。あなたの論文はそれと合わないから却下、と言うのです。


なんでなんかなあ、と考えてみると、欧米人ってそもそも医者が何も言わなくても肉を山ほど食ってます。みんなどっさり肉を食ってる社会では、野菜や果物を取った方が良いんだよ、という結果が出るわけです。でも日本の高齢者ってあんまり肉とか食べないですよね。そういう人々を対象にすると「もう少し肉を食った方が良いよ」という結果が出るのです。つまり背景になる社会習慣が違うと、違う結果が出るのです。


なんとかはかんとかにいい、とかテレビキャスターが言うと翌日スーパーからその食品が姿を消しますが、真面目な研究をするとそういうことになるのです。

 

https://bmcgeriatr.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2318-10-31?fbclid=IwAR2HW0gc--KzaIylEkW7ugI_en3sCvlAbO3-_Kd3JBT4KTDTkQJrq1PhLac


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