給料の考え方

2025/02/11

当院は、職員の給与はできる限り高く設定している。例えば、充分に経験があって仕事をしっかりこなしてくれる医療事務のパートの時給は1300円だ。無論これは、その人の能力や経験で変わるが、おそらくこの医療事務のパートの時給1300円というのは、石巻の他の医療機関と比べたら最も高いだろう。当然東京や仙台と比べられたらお恥ずかしい限りだが。

また、先月私がインフルエンザにかかり、クリニックを休診せざるを得なかった。その数日間、当然職員も休んだのだが、その分は形式上欠勤控除したが、同額をある種の臨時手当にして、結果的に欠勤しなかったのと同じにした。それは、当院の都合で休んで貰ったのだから当然なのだ。また職員によってはそれぞれがインフルエンザやコロナで休んだ人もいたが、そういうケースも全て給与は引いていない。

こういうのは「思いやり」などではない。経営者、しかもクリニックという医療機関としては当然のことだ。

とは言え、この話には裏もある。それは、当院がまだ協会けんぽ、厚生年金には加入出来ていないという事だ。あれは、従業員と経営者がそれぞれ半分ずつ負担するので、当院のような非常に小さい事業所は、到底負担出来ない。だから当院は、医療保険は医師国保か一般国保、年金はただの国民年金で、その点従業員にはご迷惑を掛けている。つまり、医療保険に関しては医師国保なら協会けんぽとそれほど負担額は変わらないが、厚生年金に入れないという事は将来の年金受取額には響く。

しかしそこは「出来ないものは出来ない」のだ。当院のように、月の売り上げがせいぜい500から600で、出ていく金も多いという零細企業では、到底厚生年金・協会けんぽの負担は出来ない。

協会けんぽに加盟していないと傷病手当は申請出来ない。従って、当院はそうした感染症による休業は全額を補填する。それは、御本人のためはもちろん、院内感染予防のために休んで貰うのだから当然だ。

どうして私がこのような方針を採っているかというと、それはフォードと同じ理由だ。つまり、石巻のような地方都市では、労働者=消費者なのだ。地元に住んでどこかに勤めている人が、石巻でものやサービスを買う。だから、他の経営者のように、「従業員の給料は安ければ安いほどよい」と考えていたら、石巻経済は廻らないのだ。何故なら、目の前の従業員こそが「お客様」なのだから。つまり、従業員の給料を下げるという事は、要するに客の財布を寂しくすると言うことだ。それをやっていたら全てが悪循環になって、石巻経済は駄目になる。

ところが、「あゆみ野クリニックの給料は他よりずっと高い」という事が噂になって広まれば、他の医療機関も職員確保のために給与を上げざるを得なくなるだろう。それが私の狙いである。そのようにしてだんだんと石巻の平均給与が上がっていけば、つまり石巻の消費者の財布が膨らむ。そうなれば当然、石巻経済は活性化するし、クリニックにとっても必要な検査をしようとしても「それはいくら掛かるんですか」と患者に質問されなくて済むだろう。患者、すなわち消費者が必要な検査にお金を出せるようになれば、クリニックもちゃんとした診療をして、ちゃんとした利益を出せるのだ。

だからこそ、私は石巻の医療機関では一番高い給与を出しているのである。要するにそれは、他の医療機関にプレッシャーを掛けるためにそうしているわけだ。

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